損失が出たときの気持ちの切り替え方 禅的投資「知足」
以前、インデックス投資の出口戦略について記事を書きました。
リスク資産の売り時は、
・年金生活では定率で取り崩す
・仕事をしているうちは、必要な時に必要なだけ取り崩す
という方針を立てたわけですが、
売り時で損失が出ていたら売却をためらう気持ちや売った後のショックを引きずりそうな私。
必要に迫られて売却するときは特に。
買い時や売り時のタイミングを計らない投資を続ける以上、一時の損益にこだわっても仕方ありません。それは分かっているつもりなんだけど…
やっぱり気にしちゃう気がする。「せっかく〇年間積み立ててきたのに、〇万円損しちゃったな―」とか、絶対思いそう。
将来、お金のことで悩まなくて済むように始めた投資。
なのに、かえって投資のせいで心を悩ますなんて本末転倒じゃあないか。
売却の方針を立てることも重要ですが、同時に心理面を支える心構えがあるといいなあと思うように。
というわけで、今回は「知足」という禅の言葉を手掛かりに考えてみました。
必要なお金は気持ちよく使っていきましょう!
「知足」とは?
タイトルにある禅的投資というのは、私が勝手に考えた言葉です。
もしよければこっちの記事ものぞいてみてください。
さて、「知足」を辞書で調べてみるとこう書かれていました。
足るを知ること。身の程をわきまえて、むやみに不満をもたないこと。
大辞林 第3版
なるほど。欲を抑えろ、ということなのかな?
足るを知る
足るを知るとは、「必要なものはすでにそろっている」ということです。つまり、目的が達成できている、完全に満たされているという側面に注目しています。
お金を使う目的は、自分の願望や欲求を実現することにあります。したがって、知足の考え方によれば、とりあえず自分のやりたいことや欲しいものがお金で手に入ったならそれで十分じゃない?と捉えることができそうです。
確かに十分なお金さえ払えば欲しいものが手に入るということは幸せなことなのかもしれません。
めちゃくちゃ原始的に考えるならば、お金がなければその欲しいものを自分でつくるしかありません。
例えば、野菜ひとつにしても生育の方法を身につけたり、収穫できるようになるまでには多大な時間と手間がかかります。コストがかかるから生産できる種類も限られてきます。
でも、お金があればお店で売っている野菜を買って簡単に手に入れることができる。お金がまだ余っていればお米とかアイスとか他にもいろんなものが手に入ります。
ちょっと極端すぎる例だったかもしれません。
ただ、お金には私たちの選択肢を広げてくれる力があるのは間違いありません。自分だけの力では容易に手に入らないものがお金によって選択肢が広げられた結果、手に入れることができた。
普段当たり前のようにやっている消費行動をこのように見つめなおしてみると、そのありがたみが分かるような気がします。
この視点を持つことができれば、リスク資産の売却時に仮に損失が出てしまっても、そのこと自体はさほど問題ではありません。
手段としての投資は失敗した面もあるけど、必要なものを手に入れることができたという点では目的が達成されているからです。
足るを知るということをお金を使う時の前提として考えると、不満が生まれにくくなると思います。
むやみに不満を持たない
不満というのは、自分の期待通りの結果にならない時に抱く感情です。投資で言えば、期待とはお金が増えること。期待に反して損失が出てしまったときは不満を感じることになります。
前章で「欲しいものを手に入れることが目的なんだから、投資の損失は問題ではない」と書きましたが、「そうはいってもなあ…」という内なる声が響いてきます。
そこで愛読書の「禅的生活」の知足のことが書かれているページをぱらぱらっと読んでみると、こんな風に書いてありました。
「知足」とはわが身の現状を完全に肯定するという大事業のことなのである。p184
うわぁーなんかすごいことが書いてある(笑)。
著者いわく、禅的生活を心がけるなら、まずは現状を全面的に肯定してみることが大切。
つまり投資で言えば、損失がいくら出ようが、それはみな「私が欲したことなのだ」と思ってみる。むろん本心としてではなく、方便として。
そうすることで、今という足場にしっかりと立つことできるようになる。「今」に力強く立つことからすべては始まります。
現状を完全に肯定することで何度でも「今」に生まれ変わることができる。
それが「知足」という考え方なのだと。
言われてみれば、気持ちを切り替えるときは、いつでも「今」を再スタート地点に据えることになります。逆に過去を気にしている間は、いつまでたっても再スタートを切ることが不可能です。
そして、「今」にしっかり力強く立つことができるようになれば、やがて意識は未来を志向するようになります。
投資においても、損失が出たことにこだわっていては前に進むことができません。
それよりも家計の見直しや売却によるポートフォリオへの影響を見直す方がはるかにいいはずです。
不満を持たないというのはなかなか難しそうですが、不満を小さくしたり不満にとらわれないように意識することならできそうです。
まず「足るを知る」ことで過度の期待を持つことを戒める。
それから現状の完全な肯定により過去を振り返らないことが大切なのだと思います。