私が考える革製品の魅力
前回書ききれなかった革製品の手入れについて。
定期的に手入れをするのが手間であるのは否めません。でもだからこそ扱うのが楽しくなるのです。
以下、私が感じる革製品の魅力について書いてみようと思います。
■使うほど味わいが出る
特に財布など毎日使う機会のあるものは、使用するごとに色の深みが増していきます。
買ったばかりのころは鮮やかさがあります。暗めの色であっても色がはっきりしてる。季節で例えるなら夏の日差しです。強く明るく照らされているような感じです。
これが使用することで次第に丸みのある色味になっていきます。色としての主張が弱まるかのようです。しかし色褪せるというわけではない。むしろ、よりその濃さを増していきます。
雰囲気としては秋の夜のような落ち着いたものではないでしょうか。色全体が落ち着きを持つのでしみじみとした感じがするようです。
角が取れて深みのある穏やかな色になっていきます。
また、硬さも次第に和らいでいきます。
買ったばかりは手と財布がけんかするみたいにゴツゴツとした感じです。クレジットカード類を差し込むにも苦労します。
ズボンのポケットに入れるときは収まりが悪いかもしれません。
慣れるまでは正直言って使いにくいこともあります。
それがだんだんと柔らかくなっていく。手に馴染むようになる。今まで頑固だった財布が打ち解けてきたように使いやすくなる。
折り目のところに自然にできる皺も良い。
劣化してきてるといえば確かにそうだけど、それはようやく使い慣れてきた証でもある。
皺の入り方は使い方によって人それぞれでしょうからね。
同じ状態のものは一つとして存在しない、唯一自分だけの財布となるわけです。
以上をまとめると、革製品の良さとは経年変化を楽しめるということにあると思います。
これは他のものではなかなかないんじゃなかろうか。
服とかって使っていくうちにクタクタになったり色褪せて貧乏くさくなっちゃうと思うんだよね。
革製品は使えば使うほど慣れていく。どんどん自分色に染まっていく。味が出るとはそういうことだと考えてます。
ただ、使用によって革そのものが劣化していくことは確かです。
劣化のスピードを落として長く快適に使用するためには、定期的な手入れが必要なわけです。
■手入れによって経年変化がより楽しめる。
いくら使い勝手が良くなるからといって、手入れをしなければ傷みが目立ってきます。
具体的な症状を挙げれば、乾燥によるカサつき、ヒビ割れ、脱色、汚れの付着など。
こうした症状が出たとしても、手入れをすれば傷みを目立たなくすることはできます。さすがに完治までは無理だけど。
手入れは経年による負の方向への劣化の力を、絶やすのではなくそのまま正の方向に変えるためのものだと思います。
時間の経過を味方につけるというイメージです。
上に書いた「味わい」は、手入れをして初めて活かされるのです。
私の手入れの方法は特別なものではありません。
・柔らかい馬毛ブラシで表面のホコリを落とす
・汚れが目立つところはクリーナーを僅かにつけた布で拭き取る
・保革用のクリームを塗る
(米粒くらいのをつけてうすーく伸ばす)
・半日くらい日陰干しして再度ブラッシング
こうすることで深みのある色になります。
傷も目立たなくなりますし、ヒビ割れを防げます。
触った感触もしっとりしていて手に馴染む感じがします。
皺や色の濃淡のムラは出てくるけど、表面の艶感が出るのでみすぼらしさはありません。
こうして感じの良い使用感を保つことができます。
この味わいは時間が経つにつれてより顕著になります。
同時に自分だけのものになっていくので愛着も湧きます。
私の場合、もはや革を育てているという感覚です。
さらに、手入れを始めると普段からより関心を向けるようになります。
どこにどういう皺が入っているか
革の触りが心地はどうか
乾燥していないか
引っかき傷は入っていないか
黒ずみがないか
等々、状態を些細に観察する視点が身につきます。
単に「いま使っているもの」としてではなく「これからもずっと使いたいもの」になります。
すると、普段の置き場所や扱い方にも気をつけるようになります。
ズボンの尻ポケットに入れて椅子に座ったり、その辺にポンと置きっ放しにしたりらということがなくなりました。
バッグの中に入れるにも同じポケットに金属のものは入れないとか、細かいことに気を配るようになります。
これって革製品に限らずモノ全般に言えることだと思います。
・・・このあとしばらく豊かさとか幸せについて書いてみたけど、めっちゃ長くなりそうだからやめた笑
気が向いたら別の記事で書いてみようかな。
革製品の手入れ一つとっても思うところがたくさんあります。
それはその人の価値観にも影響を与えるものじゃないかな。大げさかもしれないけど。
少なくとも私は何事につけても手入れすることの重要性を学んだように感じます。